転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「悪かったわね。どうせ私はシンシアみたいに社交的じゃないし、可愛くもないわよ。シンシアが大輪のバラなら、私は枯れたタンポポ。一級品のシャンパンと泥水。モルフォ蝶と蛾。ダイヤモンドと馬糞よ!」

「そ、そんなこと、少しも思っていませんが……」

非難めいたエメラルドの瞳の迫力に気圧されて、エマが片足を引く。

その隙を見逃さず、レミリアが開放中のドアに向けて走り出してしまった。

「お待ちください!」

エマの静止にかぶせるように、レミリアが「キャッ」と声を上げた。

運悪く、店に入ろうとしていた客とぶつかってしまったのだ。

「いってーな」

胸を押さえているのは二十代前半に見える青年で、貫頭衣に濃鼠色のベストを着た職人風の男だ。

その隣にも似たような風体の男がいて、「お、可愛いじゃん」と馴れ馴れしい声をかけてきた。

「ぶつかって申し訳ございません」

軽く頭を下げたレミリアが、「失礼します」と男の脇をすり抜けようとしたら、細腕を掴まれた。

「なーに、逃げようとしてんの。マジで痛いんだけど。あばら折れたわ。どうしてくれる?」

骨折など、嘘だろう。

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