平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
物憂げな眼差しを落としたジェドが、リズの髪を手からさらさらとこぼした。そして、ようやく彼女の肩から離れていく。

リズは、スカートに目を落としていた。

なんだか漂っている空気感が慣れない。普段仕事で忙しくしているジェドが、ただただ時間をゆっくり過ごしている。

気恥ずかしく思って、くすぐったさからもぞもぞと身じろぎする。ちらりと目を向けたところで、彼がじーっとこちらを観察していることに気づいた。

――ハッ。私、またからかわれただけなのでは!?

まさかという目をした途端、いつもの調子が戻ってきたリズを見て、ジェドが空気を変えるようにして笑う吐息をもらした。

「そうやって素直に座り続けているお前を見ていると、こういうゆっくりした時間も悪くないな」

普段と違って、リラックスした様子の笑い方だった。

一瞬、胸の奥が心地よさに小さく脈打った。その拍子に、なぜか『キスを我慢している』という彼の母の言葉が蘇って、リズは途端に恥じらう。

「な、何もしないでくださいよっ」

ソファの上で距離を取り、赤い顔で言い返す。ジェドが視線を前へそらし、吐息交じりに「はいはい」と言って片手を振った。

「そういう初心な反応されると、男ってのは余計構いたくなるんだがな」

姿勢を楽にしながら、ぼそっと彼がこぼす。

「いちいちイイ反応をしてくるから、つい、ちょっかいを出したくなる」

髪をかき上げる仕草で、口元を伏せて呟かれた。

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