飼い犬は猛犬でした。


「そんな奴のこと忘れて……俺だけ見てくださいよ。天音さんが自信持てるまで、好きって言います」
「ええ、それはやめて……」


 心臓持たない……
 1回好きって言われるだけでも、痛いほどドキドキして、きゅって苦しくなるんだもん。


「逃げてごめんね……」



 ポツリと呟くと、涼輔くんは立ち上がりわたしの頭を優しく撫でてくれた。


「涼輔くんは優しいんだね」
「天音さんだけにです。それ以外には優しくしたいなんて思わない」


 目を逸らしたくなるほど真っ直ぐな視線で告げられる。


 そんな事ないでしょ……? 知ってるよ、涼輔くんは冴えない方のわたしにも優しくしてくれた。


 きっと意図せずに、みんなに優しんだよ……。


「だから俺から離れないで……。ずっと独り占めできたらどれだけいい事か……」


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