勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「あのさ、そのリアクション、



『好きです』って自分から言ってるようなもんだから」




「で、でも、私は全然、相手にされてないので」




「んー……、そうでもないんじゃない? 



千里、よくあんたの話してるよ。




あんまり人に興味もたない男だから、



珍しいなって思ってた」




「そ、それは、愛犬のコタロウくんのような感じで」




自分で言っておきながら情けなくなる。




「コタロウに会ったの?」




「はい、コタロウくん、ものすごく可愛かったです。



賢いし、人懐こいし。



だから、その、



コタロウくんに接するように優しくしてもらえるのは、



すごく光栄ではあるんですけれど……。



実際、私は犬ではないので、その、ちょっとだけ複雑というか」




すると、小鳥遊さんが、驚いたように目を丸くする。




「あんた、すごいね。



コタロウまでたどり着いた女は、あんたが初めて」




たどり着く?




「千里が可愛がってるコタロウを口実にして、



千里の家まで行きたがる女は多いけど、



実際にコタロウに会ったことがあるヤツなんて、



いないんじゃないかな」




「でも、私は、その、ちょっと特殊な関係、というか」




「ああ、無理やり婚約させられたから? 



でも、いつもの千里なら、そんなの絶対に引き受けないよ。



家のために、とか大嫌いだから。



そもそも女子高生っていうのがありえないし。



それでも引き受けたってことは、



千里もあんたのこと気に入ってるんじゃないの?」




「おじいちゃん達の勢いがすごすぎて、



断りようがなかったんです。



私たちの意見なんて、全く聞いてもらえなくて。



もう鬼が憑依した覇王かと」




正直、あそこまでおじいちゃんが、高圧的に物事を決めていくひとだとは思っていなかった。




「九条のところのじーさんも、



穏やかそうに見えて結構強引だからな。



でもさ、あんたなら千里のこと落とせるんじゃない?」




口の端を上げた小鳥遊さんに、苦笑い。




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