勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「西園寺家に生まれたから



九条さんに出会えたのは、本当です。



背が高いのも素敵だと思うし、



九条さんはすごくかっこいい人だとも思います。



でも、それ以上に……」




目をつぶれば、九条さんへの想いがあふれ出す。




「お年寄りや小さな子がいると、



一歩足をとめて道をゆずるところ。



私が着物で歩いていると、



歩くスピードにも、歩幅にも気をつかってくれるところ。



転びそうになると、すぐに助けてくれて、



私が緊張して言葉に詰まっても、



ちゃんと話せるようになるまで待っていてくれるところ。



コタロウくんをとても大切にしているところも、大好きです」




コタロウくんとじゃれ合う九条さんを思い出して、



ポカポカと心に穏やかな気持ちが広がっていく。




「九条さんの優しいところも、よく笑うところも、



面白いところも、全部大好きです。



初めて一緒に出掛けた日から、



……いえ、たぶん、出会った瞬間から



惹かれていたんだと思います。完璧な片思いですけど……」




こうして九条さんのことを考えるだけで、



切なくて胸が苦しくなる。




でも、九条さんの柔らかい笑顔を思い出すだけで嬉しくて。




すると訝しげに腕を組む小鳥遊さんと目が合い、ハッとする。





いきなりこんな話を聞かせてしまって、不愉快にさせてしまったのかも!




< 123 / 250 >

この作品をシェア

pagetop