勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
昼間の公園は、小さい子が遊んでいたり、



お散歩しているお年寄りがいたり、



夜の静かな雰囲気とは違ってほのぼのとしている。




公園のベンチに座ると、



九条さんが私の顔をのぞきこむ。




「最近、彩梅おかしいよな。なにかあったのか?」




首を横に振ると、くしゃっと頭をなでられて、



もうキュンキュンしすぎて胸が痛い。




「話したいことがあれば聞くし、



何も言いたくなかったら、言わなくていいし」





空は高く晴れ渡っていて、



吹き抜ける風は透明で心地よくて。




しばらく黙って、



そこから広がる景色を九条さんと眺める。




「大丈夫です。なんでもないです!」




隣で九条さんが笑っていてくれるなら、



不安なんて消えていく。




こうして一緒にいることができれば、それでいい。




「これ、調理実習で作ったんです」




じっと遠くを眺める九条さんに、



赤いリボンを結んだマドレーヌを手渡した。




みんなで味見したときには、美味しくできてたし、



大丈夫だと思うんだけど。




「お、うまそう。調理実習とか、懐かしすぎる」




美味しそうにマドレーヌを食べる九条さんに、



ぽーっと見惚れる。




九条さんの横顔に太陽の光がキラキラ弾んで、



かっこいいなあ、と油断したところで。




「はい、最後のひとくちは、彩梅に」




くちのなかにコロンと転がったマドレーヌは、



九条さんの食べかけ。




こ、こ、これは、間接キスなのでは……⁈




かあっと顔は熱いし、味なんて全然わからないっ!!




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