勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
ふたりでキッチンに並んで、



夜ご飯の準備を始めたものの、



うろうろしている私の隣で九条さんが



てきぱきと野菜を刻んでいく。




すごい……




慣れた手つきでフライパンを扱い、



調味料を加えていく九条さんをじっと見つめる。




「あの……」




「あ、彩梅、辛いの大丈夫だったよな?」




「は、はい」




「もうすぐできるから、彩梅は座ってていいよ」




ダイニングチェアに座って、



手際よく夕飯を仕上げていく九条さんをじーっと観察。




うん、カッコいい。お料理ができる男の人って、すごい。




……でもね。




「あの、これ、九条さんの花嫁修業みたいになってませんか?」




「ん、俺もちょっとそう思った」




ううっ。




お料理、本気で頑張ろう。




これじゃ、花嫁修業にならない。



むしろ、ただのお荷物!




「九条さん、苦手なことってあるんですか?」




「あるよ。たとえば……」




無言になった九条さん。




あ、ちょっと九条さんの心のなかが読めたかも。




「うちのお父さん、……とか?」




「それ、答えにくいから、やめろ」




ふたりで顔を見合わせて、吹き出した。




< 232 / 250 >

この作品をシェア

pagetop