勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
すると、私を見た九条さんが首をかしげる。




「あのさ、彩梅、そういう服しか持ってきてないの?」




「え?」




「出かけるときに着てくような服。



家でそんなの着てたら疲れない?」




「でも、パジャマと外出用の服しか、持ってきてなくて」




「ジャージとか、スウェットって持ってきてないの?」




「そういう服はお父さん嫌がるし、



来客も多い家なのであんまり持ってなくて」




「そっか、お前、超お嬢様なんだよな……」




「でも、これで全然大丈夫ですよ?」




「じゃあさ、家にいるときは俺の服、着てたら」




「え?」




「パーカーとかトレーナー、



クローゼットに入ってるから適当に使っていいよ」




……九条さんのパーカー?




かあっと顔が熱くなって下を向くと、



九条さんの両手に頬っぺたを掬われた。




「……あのさ、今の話のどこに沸点があんの? 



顔、真っ赤だけど」




「想像したら恥ずかしくなって……」




「じゃ、想像じゃなくて実際に来てみたら? 



くつろげないだろ、そんな服じゃ」




言われるままに九条さんから、パーカーを借りたものの。




やっぱり、こ、これは恥ずかしいっ。




なんだか九条さんにくるまれてるみたいで、倒れそう……



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