勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「普通なら、怒るところだろ? 



まだ高校生なのに、かなり年上の男と



無理やり結婚させられそうになってるんだぞ。



挙句、学校帰りにこんなところに連れてこられて」




パンケーキは美味しいし、九条さんと過ごすのはすごく楽しいから、



私にとっては幸せな時間なんだけどな。




でも、5歳も年下の私を相手にしなきゃいけないなんて、



九条さんにとっては負担でしかないはず。




だから、ちらりと九条さんを見上げて言葉を選ぶ。




「……パンケーキ、すごく美味しいし、



おじいちゃん達が予約入れてくれなかったら、



きっと来ることもなかったから」




そう言って曖昧に笑ったところで。




「ついてるよ」




ひゃあっ!




九条さんの指先が、私の口元についた生クリームを掬って、



ビクリと跳びあがる。




触れられたところから真っ赤に顔が染まっていくのが分かって、



キュッと唇をかんで下をむく。




か、顔、熱い!




「……あのさ、彩梅って、だれかと付き合ったことある?」




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