時には風になって、花になって。
霧が晴れた空、雨は既に止んでいた。
「───…太陽、だ…」
そんなものを初めて見た少年。
村人も、取り憑かれていた長までもが涙を流して喜んでいる。
「すげぇ…!!太陽だ…!!」
(止まない雨は、ない)
そう笑ったサヤ。
縁はじっと見つめ、彼女が声を出せないということを初めて理解した。
「行くぞサヤ。この村にはもう用はない」
鬼を追いかける少女の腕を掴んだのは縁だった。
きょとんとした目付きでサヤは見つめ返す。
少し先で立ち止まり、振り返った紅覇。
「サヤっていうのかお前。…いつかまた来てくれよ、この村を案内してやるからさ」
(うんっ)
ピーーーッと笛を鳴らした。
それは嬉しいときにも響かせるようにしている。
「……気安く触るな」
いつの間に傍に来たんだろう。
パシッと、縁の腕を払ったのは紅覇だった。
「あ、いや、紅覇さんもありがとう!オレ太陽見たの初めてだからすっごい嬉しいよ!」
「…焼き殺すぞ」
「えっ!?なんで!?」
そんな掛け合いに、クスッとサヤは笑った。
*