時には風になって、花になって。




幾年経ったのか。

そんなものを数えて生きていなかったが、サヤと出会ってからは数えるようにしていた。

1つ1つの季節の変わり目を共に見て、目に焼き付ける。



「…7年か」



それしか経っていなくともサヤからすれば“そんなに経った”になるんだろう。

だから自分と少女では感覚が違う。


7年前など紅覇からすれば“前”と表現するけれど、サヤは“昔”と言う。



『サヤ、きょう、くれはのお膝!ねる!』


『くれはっ、抱っこ!』



物足りない…。

時が経つに連れてそんなことを言わなくなった。

ほんの少し前までは温泉に一緒に入ると駄々を捏ねていたというのに。



(あっ!見ないでっ)


「…見ておらん。たまたま通りかかっただけだ」



いつの間にか恥じらいというものを身に付けた少女。

今だって水干に袖を通す素振りですら私の目を避ける。



(いま見てるでしょっ!)



ピーーーッ!!!


…前は大人として扱えば文句を言ってきたものを。

全く人間の娘というのは難しい。



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