時には風になって、花になって。
「あっはっはっ!そりゃあれだよ、人間なら当たり前のことさ」
「…意味が分からん」
「娘っていうのはそういうもんなのよ。でもあれだね、」
あんた達は少し特殊かもしれないね───と、扇子を扇ぎながら女は紅覇を横目で流した。
この女はかつて熱を出したサヤを看病し、いつかに面倒なことに巻き込んでくれた女だ。
確か長松だったか。
妖怪が暴れていると聞いて再び戻ったこの村で駆除にあたり、暇潰しに立ち寄った紅覇。
「…特殊?」
「あんたは妖怪、あの子は人間。それでいて血も繋がってなければあんたの見た目は誰もが目を奪われる程の若い美丈夫ときた」
「それがどうした」
「歳を取らないあんたと違ってサヤは人間の、ましてや女だろう?複雑なのよ色々と」
サヤからすれば最初は親のような存在だったかもしれない。
だんだんと兄のようなものへと変わって。
そして気付けば、自分の方が年老いている。
「どう見たらいいか分からないのよ。…いいかい紅覇、サヤはあんたに恋心を抱く可能性だってある」