時には風になって、花になって。




確かに7歳の頃に比べれば、見違えるほどに成長した。

背だって伸びた。
髪だって今では狐の尻尾ほどの長さで。


それでも私は私だ。

小さな頃から“サヤ”であることには代わりない。



「…村の女に聞いたが、お前くらいの人間の娘は娶るのが当たり前の歳らしい」



めとる…?

思わず首を傾ける。



(どういう意味…?)



7歳から鬼と共に過ごしてきたのだ。

人間の世から離れて暮らしていた。


だからこそ人としての当たり前は、サヤは知らないことの方が多かった。



「伴侶ということだ。男の元へ嫁いでもおかしくない年齢だと言っている」



それがどうしたんだろう。

そんなこと言われても「へぇ、そうなんだ」としか思えない。

だって私は別にそんなこと望んでいない。


そんな理由で紅覇に昔のようにくっ付けなくなる方が嫌だ。



(それより“村の女”って誰…)



この鬼は女を嫌いなはずだ。

そして自分から関わらなくとも女から寄ってくる、昔から。


それでもまさかこの男の口からその言葉が出るとは。

…私、そんなの知らない。



< 95 / 180 >

この作品をシェア

pagetop