時には風になって、花になって。
確かに7歳の頃に比べれば、見違えるほどに成長した。
背だって伸びた。
髪だって今では狐の尻尾ほどの長さで。
それでも私は私だ。
小さな頃から“サヤ”であることには代わりない。
「…村の女に聞いたが、お前くらいの人間の娘は娶るのが当たり前の歳らしい」
めとる…?
思わず首を傾ける。
(どういう意味…?)
7歳から鬼と共に過ごしてきたのだ。
人間の世から離れて暮らしていた。
だからこそ人としての当たり前は、サヤは知らないことの方が多かった。
「伴侶ということだ。男の元へ嫁いでもおかしくない年齢だと言っている」
それがどうしたんだろう。
そんなこと言われても「へぇ、そうなんだ」としか思えない。
だって私は別にそんなこと望んでいない。
そんな理由で紅覇に昔のようにくっ付けなくなる方が嫌だ。
(それより“村の女”って誰…)
この鬼は女を嫌いなはずだ。
そして自分から関わらなくとも女から寄ってくる、昔から。
それでもまさかこの男の口からその言葉が出るとは。
…私、そんなの知らない。