時には風になって、花になって。
「…なにを怒っている」
(怒って、ない!)
怒っているのは紅覇じゃないの。
さっきからため息しかしていない。
───もしかして。
(…サヤが…嫌いに、なった…?)
だから避けるの?
だからあんなこと言うの…?
クイッと袖を引いて見上げる。
見下ろす瞳はやはり妖艶だ。
琥珀色の瞳に吸い込まれそうだった。
「…何故そうなる」
だって昔とは違うから。
私がずっと子供では居られないから。
12歳のあの日、初めて私が狼の姿となった日。
あれ以来同じ姿に変わったことはなかった。
やっぱり私は人間だ。
ホッとしているのに、どこか哀しかった。
「そんなものは愚問だ」
大きさが違うような気がした。
サヤの好きと、紅覇の好きの大きさは全然違う。
私は紅覇が居なかったら生きれないというのに。
紅覇は違うの……?
ピーーーッ…!!
ピーーーーッ!!!
言葉に出来ない気持ちを笛に乗せた。