時には風になって、花になって。




「…なにを怒っている」


(怒って、ない!)



怒っているのは紅覇じゃないの。

さっきからため息しかしていない。


───もしかして。



(…サヤが…嫌いに、なった…?)



だから避けるの?
だからあんなこと言うの…?

クイッと袖を引いて見上げる。


見下ろす瞳はやはり妖艶だ。

琥珀色の瞳に吸い込まれそうだった。



「…何故そうなる」



だって昔とは違うから。
私がずっと子供では居られないから。

12歳のあの日、初めて私が狼の姿となった日。

あれ以来同じ姿に変わったことはなかった。


やっぱり私は人間だ。

ホッとしているのに、どこか哀しかった。



「そんなものは愚問だ」



大きさが違うような気がした。
サヤの好きと、紅覇の好きの大きさは全然違う。

私は紅覇が居なかったら生きれないというのに。

紅覇は違うの……?


ピーーーッ…!!

ピーーーーッ!!!


言葉に出来ない気持ちを笛に乗せた。



< 96 / 180 >

この作品をシェア

pagetop