メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「じゃ、その首元の赤いのは・・・?」

「赤いの~?あぁ、キスマーク?これメイクだよ。」

「そ、そっか。よく出来てるな。」

ホッとしているのを悟られないように言うと、玲央の目つきが変わった。

「もしかして、俺がつけたと思った?」

「ち、違げーよ。仮にそうだとしても別に・・・。」

「へーえ?こんな朝早くにあんなに焦ってわざわざここまで来て、親の(かたき)みたいに俺を睨み付けといて?」

「だから違うって!!」

「・・・ぷぷっ。安心してよ。レミもいたしカメラマンとしてツムもいたからさ。」

ツムこと津村(つむら)は学生時代から玲央と仲の良いメガネをかけたインテリタイプの優男だ。学校では写真を専攻していて現在はこの会社でカメラの他に経理とかネット関係とかも手伝っているらしい。

必死に否定する俺がおかしくてたまらない、という様子の玲央を杏花が不思議そうに見る。これ以上ここにいるのは耐えられない。

「・・・早く着替えてこい。帰るぞ。」

「うん。」

嬉しそうに微笑む杏花の表情はメイクの効果でいつもより大人っぽくて胸を鷲掴みにされた。普段の顔と服にこの色気というのはアンバランスだが、この姿なら違和感がないと思った。

───普段のアンバランスな感じもいいが、バランスがとれているのもまた・・・。

俺は『惚れ直す』という言葉をまさに今体感していた。
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