メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
暖人さんに続いてエントランスを入るとオレンジ色の温かな照明が迎えてくれ、鉢植えのグリーンや落ち着いた色のリース、控えめで可愛らしいフラワーアレンジメントが飾ってあり、動物のオブジェなんかもあった。ポストや宅配ボックスは木で出来ていた。

───なんだか物語の中に入ってしまったみたい。

「行くぞ。」

私がぼうっとしていると彼はポストから郵便物を取り出し、エントランス奥にある扉に向かった。

その扉はまるでテーマパークのアトラクションの建物にあるような大きな木の扉だった。暖人さんが鍵を開けると、扉は自動で観音開きに開いた。

奥には木目調のエレベーターがあり、私が後について乗り込むと彼はボタンを押して扉を閉めた。『3』と書かれた丸いボタンが光っていて、ボタンまで木の模様をしていた。

3階に着いてエントランスと同じようなオレンジ色の照明が灯った廊下を一番奥のドアまで進む。このドアも木で出来ていて、長方形ではなく上部が半円状になっているアーチ形をしていて、格子窓がついていた。

「散らかってるけど、入れよ。」

暖人さんは鍵を開けると私に言った。
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