メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
このまま見ていたら唇を奪ってしまいそうで焦り、髪を唇から剥がしてやると彼女が目を開けた。目が合って何かを訴えかけて来ているように感じてしまう。そんなわけないのに。俺は慌てて目と話を逸らした。

「そう言えば、花火大会って秋にもあるし、年越しのカウントダウンとかで年明けたら花火上がったりするのに、どうして手持ち花火は夏しかやらないんだろうな。」

「そういえばそうだね。でも私、そういう『夏ならでは』とか『夏の風物詩』みたいなのって好きだよ。』

「じゃあなんで10月なのに花火持ってきたんだよ。」

「どうしても暖人と花火がしたかったから。シーズンオフで花火売ってなくてお店何件も回ったの。」

ズキュン、と胸の中で漫画みたいな音がした気がした。無意識なのかわざと言っているのか。これから同じ部屋で寝る男にどういうつもりでそんなことを言ってるんだろう。本当にこいつはタチが悪い。誰に対してもこうなんだろうか。

きっと俺がこいつに対して感じている気持ちは他の男も感じる気持ちなんだろう。

無邪気な外見で心をくすぐるようなことを言われたら気になってしまう。ただそれだけだ。

───きっとそうだ。そうに決まってる。そうだろ、俺?

そうではないことを俺が認めることになるのは約一時間後のことだ。
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