フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「まずは、これを見てちょうだい」
王女様がカバンから折り畳まれた紙を取り出し、レイに渡す。どうやら海外の新聞らしいけど、英語じゃない。
「革命の危機……?」
私がタイトルを読み上げると、レイは意外そうな顔をした。
「読めるのか?」
「うん、大学の第二外国語の選択科目がドイツ語だったから」
(香澄に合わせて……だけどね)
「なら、障害はひとつ減ったな」
レイが、また意味のわからないことを言ってる。機嫌もさっきより良くなってたし……。
「ええと……国王……これ読めない」
難しい単語に早速音を上げると、レイが代わりに読んでくれた。
「“専横を極める大臣とそれを抑えられぬ国王へ不満が高まっている”……だろうな」
記事は、詳細に今のグレース王国の惨状を伝えていた。
腐敗した政治により外貨が不足した経済危機。税金は年々はねあがり、インフレで昨日は買えたパンが10倍の価格になったり。物資の横流しに横領により使い込みで、ろくに予算が回らない。
当然、国民は飢えて病気になっても病院にかかれず、本来助かったはずの命が亡くなっているという。
「……もう、父上だけで大臣を抑えておけないわ。父上にとって従兄だけど……一方的な関係で、国王なのに父上は従兄に常に弱腰なの」
「それで?」
レイが先を促すと、ミレイ王女は膝の上でギュッと拳を握りしめた。
「ならば、とわたくしに王位を譲るとおっしゃってるの。でも、わたくしも今のままでは……力が足りない」