フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「銃創(じゅうそう)とは……また、穏やかな怪我ではありませんな」

かつてレイの火傷を診てくれたおじいちゃん……もとい。秋吉先生が、私の傷を診てくださって。

「また、グレース王国では反体制の動きが活発になっているらしいですな。
ミレイ王女殿下の内密の来日も、国王陛下の焦りの表れでしょう」
「ああ……それにさくらが巻き込まれた……くそっ!」

悔しそうにレイは壁を叩くけど、今……気づいた。

レイが、私の名前を呼んでくれていることに。

いつも、“アンタ”呼ばわりだったのに……。

嬉しくて、嬉しくて。我慢できない涙があふれる。秋吉先生に「痛みがひどいのですか?」と心配されたけど、首を振って違うと伝えておいた。

「痛むのか?」

レイにまで心配されて。違うと首を振ったのに、いきなり顎を掴まれて……唇を重ねられた。

「!!」

「涙、止まったな」

ひょうひょうと言う彼が小憎らしいけど、確かに涙は止まっていて。

「おやおや、仲よきことは……ですかな。ふおっふおっふおっ」

秋吉先生にからかわれて、顔が絶対赤くなってるよ……。

「発熱や感染症の危険もありますから、今日明日は念のため入院してください」
「……はい」

せっかくみんなと過ごせたのに……私のせいで台無しになってしまって。みんなガッカリするだろうな……。

落ち込んだ私の頭を、レイはポンポンと叩いてこう言ってくれた。

「アンタが助けたから、ミレイは生きてるんだ。誰もアンタを責めはしない……むしろ誇りに思うさ」


もちろん、オレもな。と呟いたレイは。

ごく自然に私にキスをした。

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