フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


ーーあれから10年経った。

私と香澄はベリーヒルズレジデンスのマンションで共同生活をして、香澄の一人息子の信治くんを一緒に育てている。

結局私たちは仕事は辞めずに続けていて。35歳になった今、香澄は課長にまで昇進して多忙を極めていた。
対する私は平社員のまま。
お飾りで役目はあるけど。

まあ、自分なりに頑張った結果だから仕方ない。

グレース王国は王家は存続したものの、かなりの大改革で何年か混乱したけど。民主制の議会との兼合いになりようやく平穏が訪れた。レイが努力した結果だった。

(レイ……頑張ったんだね)

彼を想うと寂しいし恋しいけど……。私は私で頑張ろうと励まされる。
彼は、私のことを忘れたかもしれないけど。


「ぶ~ん」
「信治くん、ゲームは夕飯までだからね」
「わかってるよ~だ!」
「宿題はやったの?」
「しらな~い!」
「あ、こら!」

いつも宿題は学校から帰ってすぐやりなさいって言ってるのに!最近は悪知恵もついて、すぐ逃げるようになってる。

「こら~待ちなさい!」

クスクス言いながら走り回る信治くんが小憎らしい。

「ここまでおいで~だ!」

サンルーフまで飛び出した信治くんは、なんと手すりの上に立ってる。

「信治くん!危ないよ!!」
「へへ~ん、へっちゃらだもんね!よっ……わあっ!!」
「信治くん!!」

両手を広げてよたよたと歩いていた彼は、強風に煽られてバランスを崩しかけた。

「信治くん!」

咄嗟に飛び出して手を伸ばそうとしたけど、届かなくて。小さな体が落ちかけた……瞬間だった。

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