フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


ぶわっ、と凄まじい風が吹き込んできた。

それと同時に、風を切る鋭い音ーー。ヘリコプターの大きなローター音が響いてくる。

「えっ……あ、信治くん!」

慌てて駆け寄ると、信治くんは見知らぬ男性に抱えられていた。

「おそらく、気を失っているだけだ。寝かせていればじきに気がつく」
「ありがとうございました……え?」

ヘリコプターのドアから梯子で降りてきたサングラス姿の男性は……懐かしいような、切ないような感じがしたけど。

「さくら」ーーと、呼ばれた瞬間に理解した。

「…………レイッ!!」

嬉しくて、苦しいほどに切なくて、彼に抱きつこうとしたけど。

「まずは、この子を寝かせようか」と苦笑いをされて、恥ずかしさで死にそうになった。

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