フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「さくらさん、社長にスープを持ってきてあげてください。何とかして飲ませますから!」
「あ、はい」
小椋さんはずいぶん張り切ってるから、お任せすることにした。長年真宮さんのもとで働いているなら、彼のことは詳しいだろうし。本当に他人の私よりましだろうな。
それより、とコーンスープを温めながら胸が痛む。
小椋さんでさえ私を真宮さんの婚約者扱いということは、すでに真宮さんの会社に知られているんだろう。
偽物の婚約者なのに……そんなに広めてしまっていいの?と心配になる。本当に好きな人が出来た時に困ってしまうんじゃないかって。
ちょっと、だけ胸が痛む。
真宮さんが本当に愛する人ができたら、って想像してしまうと。
熱々に温めたコーンスープをトレイに乗せて真宮さんのそばに運ぶーーと。
ふわり、と鼻をくすぐる薫りに、一瞬動作が止まった。
(この薫りって……)
気をとられたせいか、スープのお皿をトレイからテーブルに置こうとした時、バランスを崩してしまった。
「あっ……!」
まるで、スローモーションみたいだった。
お皿が手から滑り落ちるところと、自分に向かって落ちて広がる液体。
だけどーー
咄嗟に私を庇うように動いて、スープを浴びたのは真宮さんだった。