フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「……」

バスルームに水音が響くなか、真宮さんがなにかを呟いた気がした。

「真宮さん、背中が痛いんですか?」

ひどい痛みで呻いているかと思い、心配になって彼の顔を覗きこもうとした。

「大丈夫ですか?」

けど、真宮さんは濡れた前髪をかきあげてため息をつく。その仕草がやけに艶めいて見えて、ドキッと胸が鳴った。

「ーーアンタこそ、平気なのか?」

紅い双眸が私を見上げてくると、カアッと顔が熱くなる。

「わ、私よりあなたのことですよ……」

ふと、まだ言ってないことがあると気づいた。

「あの……ありがとうございます……」
「何が?」

真宮さんがすっとぼけるから、私は頭に血が昇りそうになった。

「ですから、私のドジであなたが火傷を……ごめんなさい。護ってくれて……ありがとう」
「アンタのドジじゃないよ。皿に羽が生えて勝手に飛んだだけだ」
「え?」
「それか、空中に油が浮いてて皿が滑ったんじゃないの?」
「…………」

本気で言ってるとは思えないけど……彼が、私のせいじゃないって言ってくれてる気がして。不覚にも泣きそうになった。

「……ありがとう」


< 34 / 139 >

この作品をシェア

pagetop