フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「あ、ごめんね……大丈夫だよ!私はなんともないから。ほら、この通り」

カトラリーを手にした私は、前菜を口に押し込んでほおばった。味なんかわからないけど……場の空気を壊すくらいなら、空元気でも明るく振る舞う方を選びたい。

本当は、なぜって言いたい。

和彦に、ありったけの罵声を浴びせて問い詰め泣きわめきたかった。

香澄にだって……そんな卑怯な男はやめた方がいいって言ってやりたかった。

でも、できない……
新しい命が香澄には宿ってるんだもの。

お母さんを病気で早く亡くした香澄は、早く子どもを欲しがってた。自分がお母さんなら、寂しくさせたくないって……

それに、和彦だって社長令嬢の香澄なら蔑ろにはしないはず。大切にしていくだろう。

一方的な付き合いだった私と違って……

連絡は和彦からだけ。会うのは私の家だけ。彼が欲しいものがあれば大抵私が買ってあげて、反対に彼からのプレゼントは何もなくて。
突然来ては泊って身の回りの世話をしてもらい……気まぐれに抱く。わがままなんて一切言えない関係。それがきちんとした恋人と言えるとは思えなかったけど……私は彼といられれば幸せだったし、好きだった。
バカだって自分でもわかってた。
それでも、いつか彼が私に振り向いてくれる。プロポーズしてくれる……って。愚かにも信じてたんだ。


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