フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
ーーえっ?
レイ殿下? 第一王子??
誰が?
まったく縁がなかった言葉に、頭が理解してくれない。
ぼんやりした私に苛立ったのか、王女様は更に目をつり上げた。
「だから、レイ王子から離れなさい!と。ここまでわたくしに言わせる気?」
「ミレイ様、後はわたくしが……」
後で控えていたスーツ姿の女性はクイッとメガネの位置を指で直すと、私の方へ向き直る。
茶髪をひっつめて、メイクも最低限。紺色のかっちりしたスーツがいかにも真面目そうなひとだ。
「春日井さくらさん……とおっしゃいましたね」
「はい……」
仕方なく返事をしたけど、本音は一刻も早くこの場から去りたかった。頭の中が混乱してゆっくり考えたかったし、もしかしたらという嫌な可能性も捨てられなかったから。
「まずは、失礼をお詫びいたします。申し訳ございません」
けど、意外にも女性から謙虚に謝罪され、気が抜けてしまった。
「マリア、そんな庶民に謝罪など必要ないわ」
「ミレイ様、常々お教えしてますでしょう。ノブレスオブリージュと。高い身分には相応の代償が必要です、と。他の者の心や立場に寄り添うのも、必要な資質でございます。
あなたはご自分の我が儘で会社の業務に支障をきたし、春日井さんの本来こなせたお仕事の邪魔をされた……そのご自覚はないのですか?」