フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
その日の夜、さすがに火傷の件があるから真宮さんの帰りは早かった。
真宮さんは今回は一人で診察室に入ったから、待ち合い室で手持ち無沙汰になる。外来患者はすでに居ない時間帯で静まり返ってる。
で、小椋さんに恐る恐るマリアさんのことを訊いたら……彼はあっさり認めた。
「マリアさんと会ったんですね。僕も一応貴族のはしくれでしたけど、お母様とともに女王陛下の亡命に付き合いましたからね。なら、ってマリアさんに公爵家の継承者になってもらいました。彼女の方がしっかりしてますからね!」
貴族のはしくれって……公爵って……貴族の中では最高位なんじゃ。
とはいえ、小椋さんの話になにか聞き捨てならない、穏やかでない言葉があったような。
「亡命…………したのですか?女王陛下が」
「はい!ミルコ女王陛下は議会の定めた婚約者でなく、自ら夫と定められたのが身分があまりよろしくない方だったのですよ」
やっぱり、マリアさんの言ってた通り。小椋さんは真宮さんの事情に詳しい……というか、一部始終を知っているんだ。
知りたい……。
正直に言えば、真宮さんのことは出来る限り知りたい。
……でも。
私なんかが、知っていいの?
真宮さんとは、偽の恋人で婚約者を演じてるに過ぎない。結婚式は挙げても最初から入籍もないし、すぐに別れるのは決まってる。
つまり、しばらくしたら赤の他人に戻る……いいえ、今だって十分他人だ。
何の繋がりもない、先のない関係なんだ……。