フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「あんたは……春日井さんのどこが良かったんだ?」

意外なことに、和彦から発言があったけど。どう考えても友好的とは言えない、挑発的な雰囲気だった。

「どこが、とは?」

真宮さんが冷静に聞き返すと、和彦はハッと鼻で笑う。 そんな態度にムッと来たのか、香澄から注意が飛んだ。

「ちょっと、和彦! さくらと真宮さんに失礼でしょう!」
「そうか?俺は親切に事実を教えてやってるだけだ。だいたい、おまえと俺で何度クライアントや取引先に頭を下げてきた? 春日井さんのドジでの尻拭いでな!」

和彦がドンッとテーブルを叩き、食器やグラスが揺れる。

「……それは……そうだけど。でも。同僚ならそんなの当たり前でしょう。それに、さくらは大切な親友。同僚じゃなくたって助けるわよ」
「それだよ。香澄、おまえがずっと春日井さんを助けて護ってきた。だから、彼女は身も心も未だガキなんだよ!成長しないまま大人になったんだ」

和彦が吐き捨てるように言った言葉が、胸に深く突き刺さった。

“身も心も成長しないガキ”ーー。

私は、和彦にずっとそう思われてた。

本当に、そうだ。
今だって真宮さんに流されてこんな相応しくない場所に来て……。

ずっと、ずっと、誰かに守られ流されるだけの子ども。それじゃあ誰にも選ばれるはずがなかったんだ。

目の奥がじんわり熱くなるけど、こんな時に泣くほど子どもになりたくない。懸命に我慢した。
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