フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


突然後ろ頭に手が回されて、グイッと引き寄せられた先はーー真宮さんの胸で。

ジャケット越しに感じたのは、昨夜と同じ逞しさと安心感。

「ーーじゃあ佐々木さんに逆にお訊きしますが、あなたはさくらさんのなにを知ってますか?」
「は?なにをって……色々と!だよ。あんたより知ってるに決まってるだろ」

むきになった和彦を、真宮さんはクスリと笑う。

「仕事場だけで、彼女の全てがわかるのですか?誰でも仕事以外のプライペートはありますよね?それを知らずにその人を評価できるとでも?」
「それは……」

真宮さんの見事な返しに、和彦の勢いがなくなっていく。 そして、止めと言わんばかりにこう言った。

「それとも……仕事“以外の”さくらさんを、“個人的に”知ってらっしゃるとか?」
「……っ!」
「ちなみに、彼女はとても甘いし優しい……あなたが知るはずないですよね?」

あくまでも冷静に、かつ挑発的に真宮さんは和彦を追い詰める。頭に血が昇ったらしい和彦は、ガタッと席を立ち上がった。

「んなことあるはずないだろ!失礼!!」
「和彦! ごめんなさい、あんな子どもじみたやつだったなんて」

大股でレストランから出ていった婚約者にかわり、香澄は深々と謝罪してくれた。

「ううん、いいよ。それよりこちらこそごめんね。せっかくのクリスマスイヴなのに……」
「いい! 結婚前なんだし、知ることができて良かったよ。お詫びにここはご馳走させてね。失礼します」

ぺこり、と頭を下げた香澄は伝票を手にしようとするけど。真宮さんから支払いを済ませました、と聞いてごちそうさまでしたと笑った。

「さくら、いい人じゃない。絶対逃がしちゃダメだからね」
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