フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
ビルディングにある百貨店の食品売場に行くと、「やっぱりお高いけど、質がいいわね」とお母さんはあちこちの売り場を興味深そうに覗いてた。
「さくら、真宮さんがお好きなものは何?」
「う~ん……どちらかと言えば洋食かな?シチューとかグラタンとかハンバーグとか……」
「案外庶民的なのね」
お母さんの質問に何気なく答えて、ハッと気が付いた。
そう言えば、真宮さんは今まで高級レストランの常連だったわりに、リクエストするメニューはむしろ一般的な家庭で作られそうなものばかりだ。
「なら、むしろ手の込んだものはやめた方が良さそうね。シンプル・イズ・ベストで食べやすいものにしましょうか」
「うん、そうだね」
そう言ってお母さんは食材を真剣に眺める。小麦粉、バター、牛乳。ホワイトルウを作るのかもしれない。
私も何を作ろうか? とお母さんと相談しながら結局シンプルなマカロニグラタンに決めた。
こうしてお母さんと買い物に来るなんて、高校生以来だからやっぱり懐かしいし楽しいな。
何となく浮き立った気分のところに、お母さんから意外な言葉が出た。
「気が紛れた?」
「え?」
「あなた、気が塞がってたみたいだし……外に出たりお料理すれば多少変わるでしょ?」
お母さんの心眼には、やっぱり敵わない。
平気そうにいつも通りに振る舞ったつもりでも、やっぱりお母さんには見抜かれてしまってたんだ。
残念と思うと同時に、ほっと安心する自分もいた。