フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

(……真宮さんに美味しい、栄養のある温かいものを食べて欲しいな)

材料を切り下ごしらえをして煮込むのも、いつもより楽しい。彼に少しでも美味しいと思ってもらいたい……そんな想いが込もってる。

出来上がり間近のポトフをかき混ぜていると、お母さんがしみじみと呟いた。

「さくら、本当に真宮さんが好きなのね」
「……うん」

きっと、隠してもお母さんには見破られてしまう。だから、下手に誤魔化すよりは素直になる方を選んだ。

未来のない関係で、きっとまた片想いで終わるだろうけど。

今の私は、確かに幸せ。それは、きっかけがどうあれ、真宮さんがくれたもの。だから、先がないと泣くよりも……少しでも、真宮さんが私といた時間が楽しかったと思い出してくれればいい、って思えたんだ。

そうこうしてるうちにマカロニグラタンが焼き上がり、熱々のポトフとサーモンのムニエルも完成。本当に家庭料理ばかりだけど、書斎から出てきた真宮さんの顔が輝いたのを見た。

「これはまたご馳走だな」

そう驚くお父さんに、お母さんが眉間にシワを寄せため息をついた。

「なに言ってるの。いつも二人だから簡単に済ませてるだけよ。さくらがいた時はこれくらい作ってましたよ」


「おいおい……それじゃ俺の立場がないじゃないか。そりゃ娘よりは可愛くないかもしれないが……」

なんだかお父さんがいじけてきたからか、お母さんはやれやれと肩を竦めた。

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