フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


お母さんがいてくれて助かった……

あの後、和彦は足早にその場を後にしてくれたけど。絶対機嫌が悪くなってた。
イライラした時の癖があちこち出ていたし。

(私に何の用事だったって言うの?散々利用して自分から捨てたクセに……)

気にはなるけど、もう思い出さないことに決めたんだし。過去のことと割りきらないと。

(そうだ……和彦は過去。今の私は……真宮さんとの時間を大切にしたい)

いつまで、彼と一緒にいられるかわからない。だからこそ、1日1日過ぎるのが惜しくて……。

和彦との不安だった日々とは違う。

穏やかで、安らかで、愉しくて……たまにドキドキする毎日が……とても愛しい。

(あ……)

そうか、とキッチンに立っている時、ごく自然に調味料を出して気付いた。

(私……真宮さんが……好きなんだ。いつの間にか好きになってた)

和彦の姿を見ても、心は冷えていた。むしろ不愉快で、顔を見たくないとさえ感じて。

あんなに好きだったはずなのに。

「さくら、どうかした?」
「あ、ううん。ブイヨンはこんな感じでいいかな?」

お母さんに話しかけられて、ハッと我に返った。いけない、いけない。今はお料理の最中なんだった。

「うん、いいんじゃない? これをベースにしてポトフを作りましょうか」
「ありがと。じゃあ野菜切るね」

ブイヨンの味見をしてもらったけど、お母さんの舌は厳しいから一度で合格はなかなかないんだよね。だから、嬉しいな。

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