フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「だけどね、さくら。自分さえ我慢すれば……なんて考えちゃダメよ」
「え……」
お母さんのまっすぐで真剣な眼差しに、ドキンと心臓が跳ねる。 お父さんに聞かせたくないように、声をひそめた。
「あなた……すぐ我慢して自分の中でどうにか処理しようとするでしょ?
小学生の時のいじめだって……
わたしが先生に言おうとしても、“なんにもないから!大丈夫だから!先生には言わないで”って、ぎこちなく笑ってたでしょ? すぐ香澄ちゃんが助けてくれたから良かったけど。
あの時からあなたは、我慢するクセがついちゃって……なぜ、もっと早く気づいてあげられなかったのかしら? って後悔したのよ」
「……憶えてるよ。お母さん、一生懸命どうにかしてくれようとしてたよね。ありがとう……」
ちゃんと憶えてる。気づいてくれた嬉しさと、だからこそ心配をかけたくないという想いを。
「だから、さくら。なにか不満や不安があればきちんと相手に……真宮さんに伝えるのよ。本当に小さな、些細なことでも。積もれば大変なことになるんだから」
まるで、半月前の私に言ってくれてるみたいだった。
和彦に都合のいい女扱いされていた、バカな私に。
「うん……ありがとう、お母さん」
こうして耳の痛いことをわざわざ言ってくれる人こそ、大切なんだ。そう実感できた。
(和彦とはもう関わらない。これ以上つきまとうなら、香澄にちゃんと言うよ)