フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「それ、食べてみた?」
「た、食べた……よ。美味しかった」
まだ、後ろから抱き締められたままって……何の拷問だろう。息も絶え絶えになんとか答えると、何だか嬉しそうな気配を感じた。
「……そうか。これは……母がよく作ってくれた故郷の菓子なんだ」
「……真宮さんが作ったんですね」
私の言葉に不満だったのか、真宮さんがさらにギュッと強く抱きしめてくる。苦しいですって……。
「まだ、真宮って他人行儀に呼ぶの?」
「えっ……でも」
「恋人なら、名前で呼んでよ」
(えっ……そんなのできない!だって……本当の恋人じゃないのに)
「ひゃあ!」
首、うなじを舐められた。信じられない!
「まだ、呼べない? 呼べないなら、親御さんの前でもっとすごいことをしようか?」
す、すごいことって……一体何をするつもり!?
「し……信じられない!ひゃっ」
今度は、首すじにキスされた。チクッとしたから、絶対キスマークつけられてる!
「ほら、呼んでよ」
ずるい……!
私が引いた一線を、彼はいとも簡単に飛び越える。
のめり込みすぎないよう、気持ちをセーブするためにあえて名字で呼んでたのに……。
別れが少しでも辛くないように、って。
だけど……。ダメだった。
「れ、れ……レイ……」
そう、私が呼んだだけで。
背中越しなのに、彼が……レイが、とても喜んだのがわかってしまうから。
嬉しそうに微笑んだのが、雰囲気から伝わってくる。