フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「あ、それならボクも付かず離れずの遠くから、ハアハア息を荒げながら見守りますね!」
小椋さんはそう言ってさらば!と爽やかに去るけど。
ハアハアって……単なる不審者じゃ。
なんてツッコミをしているうちに、気づいたけど。
もしかして……今、私はレイと二人きりなの!?
ギシッ、と自分が固まった音が聞こえる。
そもそも私自身の対人スキルが低すぎて、何をどうすればいいかがわからない。お母さんや小椋さんのサポートを期待してた分、早くも挫折しそうだけど。
(だめ! ちゃんと自分で何とかしないと……香澄に助けてもらってきた甘い自分を変えるためにも。頑張る!)
香澄が離れてく今、自分で自分を成長させないと。自分が嫌いなままで何も変わらない。
早く、自信のある大人の女性になりたい。和彦のような卑怯な男に、馬鹿にされないように。
よし、と拳を握った私は、キョロキョロと周りを見回して見つけたものを指差し、深呼吸をして落ち着いてから声を張り上げた。
「レイ、ほら。変わったお店があるよ。行ってみようよ」
わざとらしいかもしれないけど、彼の手を掴んでぐいぐいと引っ張る。
「お、おい……」
レイが困惑した声を出すけど、構うもんかっていやに強気になってた。
(もしかして、レイこそ私が嫌いなのかもしれない。でも、いい。彼に楽しい時間を……それと、出来たら誤解を解きたいもの)