フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

私たちが向かった先は昔ながらの喫茶店といった趣きの、レトロな木造の建物。いい具合に錆びた看板に惹かれて、入ってみれば。そこには昔近所にあった駄菓子屋さんを思い起こさせるような雰囲気。それでいながら天井まで本や雑貨がぎっしり並べられ、半地下の店内に入るとゆったりとテーブルとイスが並べられている。
どうやら最初にドリンクチケットを買うみたいで、お財布を出しながらレイに聞いた。

「レイ、何飲みたい?」
「自分で買う」

レイに素っ気なく言われてさっさとチケットを買われてしまって……。

出だしから挫けそうになるけど、負けるもんか!とキャラメルラテのカフェアートを選んで、急いでレイがいる席へ向かった。

「ここ、好きな本を読んでいいんだって。気に入ったら買い取りもできるみたい。雑貨も買えるって。お土産なにか買おうかな……」
「……そう」

あれ?レイの機嫌がますます悪くなった気がする……なんで??

私だとぜんぜんわかんないよ……

泣きそうになりながら、泣くなと歯を食いしばってレイに話しかけ続けた。

「わあ、見て!猫ちゃんの顔が描いてるよ。可愛い!」

記念のためスマホを出して、店員さんが置いたカフェアートをパシャリと1枚。早速香澄に知らせるため、コミュコミュを開いた時。

「……本当に使ってくれてるんだな」

レイが、ぽつりと呟いた。

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