フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
レイが私を抱きしめる腕に力を込めてくるけど、強すぎて息苦しい。
「れ、レイ……苦し……」
「ダメだ……アンタの泣き顔を、他の男どもに見せたくない」
(な、何よそれ……!そりゃ、私が泣くとひどい顔になるのはわかってるけど。ブサイクだからって……ひどくない?)
なんだか頭にきて、いつの間にか涙が引っ込んでた。
「酷い顔はわかってるから! お手洗いいってくる」
「何で?」
本気で不思議そうに訊かれて、頭にきて乱暴に答えた。
「メイク直し!」
(人前でこんなこと言わせないでよ!)
なのに。
「ダメだ」
レイはあっさりとNOを突きつけてきた。
「なんで?」
「だから、アンタはそのままでいい。オレだけ見てろ」
何、その俺様。というか……早く腕の中から解放して欲しい……。
今さら恥ずかしくなってきた。
「あのう……モカコーヒーです……」
店員さんが遠慮がちにレイのオーダーの品をテーブルに置いてくれて、迷惑を掛けて申し訳ない気持ちで一杯になった。
そのうちスマホに通知が来て、香澄からのコミュコミュのメッセージ。
香澄も偶然近くにいるから、今から合流するから待っててね!とのこと。
もしかしたら、和彦もいるの?と懸念したけど。もしもいたとしても、今はレイがいるから。と思い直し“OK”と返事をした。