フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

香澄が来るなら、なおのことメイクを直さないと。
どうにかレイの腕から抜けだし、お手洗いに駆け込んで大急ぎでメイクを直す。最近は泣くことが多いから、マスカラなんかはウォータプルーフタイプ。さすがお高かっただけあり、しっかり崩れずにパンダ目にもなってない。

(私、こんなに泣き虫だったっけ……)

小学校で香澄と友達になって以来、あまり泣かなくなってたのに。レイに関わると自然に涙もろくなってる。

でも、これからはなるべく笑おう。

レイが私を思い出した時には、笑顔であって欲しい。

自分が美人でも可愛いタイプでもないことは、よくわかってる。

だから、せめて笑顔を彼の記憶に残したい。
笑顔なら、泣き顔よりましなはずだから。

(うん、大丈夫!私は元気!)

ピシャリ、と痕に残らない程度に軽く頬を叩いて、自分に気合いを入れた。


「お待たせ……あ」
「やっほ、さくら」

レイがいるテーブルの反対側に香澄と和彦が座ってて、嫌な気持ちになったけど。努めて顔に出さないよう気をつけた。

「せっかくのデートなのに、押し掛けちゃってごめんね」
「いいよ、別に」

私がそう答えるけど……レイが射殺しそうな物騒な目を和彦に向けてる。

たぶん、レストランでの出来事と和彦が私に会いに来たことで相当怒ってるんだろう。


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