1日だけの恋~10月25日夜完結~
「でもご両親に嘘は……やっぱり」
「ひどいなー、自分の時は僕に嘘をつかせて。僕の時は嫌がるんだ」
男の言う通りである。さっきの嘘は良くて、次の嘘は悪いなとどいう基準はどこにもなくて。
嘘は基本的に悪い。
だけど、嘘に嘘を重ねるとはよく言ったもので、1度嘘をつくと、こうして人は泥沼にハマってしまうものなのかもしれない。
抵抗があっても、もはやこちらに選択肢はなさそうで、男の言う通りに小芝居をうつほか道はないようだった。
「やりますけど…。でも」
やけくそになってきていた。
泥沼に足を突っ込んだのだ。それは自分が撒いた種である。
男が道路脇に停めていた車に近づきロックを外し、助手席のドアを開けて私に乗るよう促した。
やはりというべきか、男の車は高級なスポーツカーだった。
車に乗り込み、エンジンをかける。
ドアのキーがロックされ男が楽しげに車を発進させた。
「大丈夫。人を見る目は確かだから」
詐欺師を見る目が確かなんて自慢にもならないのに。
信号で停まったときに彼は
「改めまして、僕は綿貫斗真です。よろしく」
そういって握手を求めてきた。