1日だけの恋~10月25日夜完結~
信号で停まったとき

「ほら、あの鳩みて」

信号器の上に2羽の鳩がとまっている。それを指さす綿貫さん。

「はと?」

「鳩は、その時好きな相手と付き合って子供を作り育てて小鳩が巣立ったら別れて、また時期になったら別の相手を探すんだ」

青になり、綿貫さんは車を発進させる。

「だから人間も、もっと鳩みたいにフリーな気持ちでいるといいと思わない?誰かと結ばれることを堅苦しく考えなくていい……その時々で相手を変えたってかまわないってね」

それって今回の相手は、たまたま、この男だくらいに考えてってことだろうか。

一晩だけ付き合うのは別に普通のことだし、もっと気軽に考えろって?

そういうことが言いたいのかな?

少し、突き放された気分だ。

私と綿貫さんは、やはり他人。
恋人ごっこは、すぐに終らせるつもり。
そういうことだろうか。

用がすんだなら、そこで終わりの関係。
綿貫さんが、私に求めているのはあと腐れなく別れられる関係。

はっきりいえば、今夜欲を吐き出し、見合いを断る口実にだけ使える女が必要なだけだ。



心配しなくても私なら大丈夫。
つきまとわない。

綺麗に消えるつもりなのだから。



ただ、残念ながら鳩は嫌い。

鳩みたいにフリー?なぜ、例えが鳩なの?他の鳥や動物でもいいのに。鳩じゃあ、全くなりたい気にならないんだけど。

私は首を小さく横に振った。
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