1日だけの恋~10月25日夜完結~
「っ!!」
驚いて自分の手をぐっと握りしめていた。
うそっ。
私を知ってるの?
綿貫さんは、洗った手をタオルで拭きながら言った。
「和嶋 真理亜さん。あなたの素性は、はじめからばれてますよ」
本当の名前までばれている。綿貫さんには昨日、棚橋 真理亜だと名乗っていた。
棚橋は、母の旧姓だ。
素性をばらしたくなかった。
なぜなら。1日だけの関係なら知らない女の方が綿貫さんも後腐れないだろうと思ったから。
でも、綿貫さんに本当の名前「マリア」と呼ばれたくて下の名前だけは本当の名前を語ったのだ。
綿貫さんは、強引に私の腕を掴み、引き寄せてバスルームの壁に私の両肩を押し付けた。
「あんた、なんのために俺に近づいてきたんだよ。ん?!
新製品の情報でも盗みにきたのか!!」
目の前にいる綿貫さんは、冷たく光る瞳で私を見ている。
昨日とは違う目だ。
優しい微笑みも消えている。
こんなはずじゃなかった。
綿貫さんにこんな目で見られたかった訳じゃない。
冷たく鋭い瞳が私を見据えている。痛いほどに押さえられた肩に綿貫さんの怒りを感じていた。