バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
 山中先輩と私も少し後ろをついていった。

「ずいぶんおしゃれしてるじゃない」と、先輩が耳打ちしてくる。「いいじゃん、似合うよ」

 と、そのまま私の首筋に鼻を寄せてきた。

「あれ、社長と同じ香水?」

 え、バレた!?

 先輩がニヤけている。

「へえ、七海、意外とやるじゃん」

 やるじゃんって言われても返事に困ってしまう。

「試供品をいただいたんです」と、万年筆型のスプレーを見せるしかなかった。

「それ、ベリヒルモールのディスプレイで見たよ。発表されたばかりの新商品じゃん。イタリアのプロフーモ・ブランドとコラボして、容器を輪島塗の職人が手がけた『URUSHI』ってシリーズ」

「え、そうなんですか」

「香りだけじゃなくて、俺色に染めようとしてるんじゃないの?」

 思わず顔が熱くなる。

「な、何を言ってるんですか、先輩」

「マーキングってやつでしょ。俺の女だからなって」

 俺の女って……。

 やっぱり先輩っていろんな意味で経験豊富なんだな。

 こういう話題になると、何の経験もない私はまるで対応できない。

 ていうか、そんなのあるわけないし。

 そもそも社長と私じゃ釣り合わないじゃないですか。

 気がつくとまた先輩から遅れてしまっていた。

 ああ、まただ。

 私はラウンジの他のお客様の迷惑にならないようにそっと後を追いかけた。

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