秋を憂い、青に惑う
本当の自分がどんどん遠ざかっていく。
同じ日々を繰り返し、単調な日々のなか、ただ呼吸をして、ここにいる。
こんな人生になんの意味があるのだろう。
本当の言葉で、誰かといつか本音をぶつけてくだらないことで笑えたら、怒れたら、泣けたらもっと、生きている心地がするだろうか。
わからなくなる。
見失う。
なんのために、生まれたのか。
(…教科書忘れるとかあほか)
いつも通りの単調な日々のなか、課題をするための教科書を忘れて教室に戻った。この時間、他の生徒は部活に精を出し、そうでない者は友人達と寄り道をして自分たちを満喫している時間だ。
一度途中まで帰って戻ってきたものだから、もう門限に間に合わない。門限というかあの母親が勝手に決めつけたおれの帰宅時間だけど。連絡をすればいいけれど、そうしたら迎えに行くとか言い出しそうだからなんか適当に言い訳を考えよう。
そんなことを考えながら無人の教室の扉を開けたら、
無人であるはずの扉を開けたら、そこにいた。
「…え」
片桐。片桐五十鈴。…だよなたぶん。
なぜかおれの席に座って机に突っ伏しているその姿を見て、辺りを見回す。…なんでだ。なんでこいつおれの席で寝てるんだ。
「…あの」
肩に触れるのは気が引けて、とん、と遠慮がちに机を指で叩く。でも反応がなくてとんとん、と今度は二度さっきより強めに叩いた。なんなんだ。
「起きろクソ女」