俺様めちゃモテイケメンが一人にはまったら。
シャワーを浴びラフな服装に着替えた祐世が『食事の前に話をしたい』と言った。
確かにまだ五時で夕飯を食べるには早すぎる。
煮込んでいた肉じゃがの火を消しソファーに座った。


「ほんっと、ごめん。この間も。」

「祐世、最近謝ってばっかりだね。私だって悪いとこあったし、もう謝るのやめて。謝りあうんじゃなくて、これからの話しよ。」


そう言うと、やっと頭を上げ『そうだな』と答えた彼の表情は硬いままだ。
なんて言われるのだろう。脈がドクドクと早くなる。


「前にも言ったけど、物心ついた時から自分の周りから家柄とかで見られるようになる事が多くて・・・」


私が高三で知り合うまでの話をしてくれた。
私がそういった彼の環境に関係なく付き合っているのはわかっていたのに、そう言う事で態度を変える人間じゃないと思っていたけど私の口から有知商事の名が出て、最初に話さなかったから余計に言いづらかったと。

そして自分が有知商事の後継者最有力候補として大学三年の一月から空いている時間は社に出社し、社員達に混ざって仕事や経営状況について勉強をしていた事など、以前レストランでの話より詳しく教えてくれた。

祐世の今までの気持ちはわかった。

直ぐに話をしてくれなかったのは信じてもらえて無かったのかと悲しくもあるが、私には想像もつかない環境だったのだろう。実際、高校時代の彼の周りはいつも騒がしかったから。

祐世が有知商事を背負っていくために私は今のまま彼の隣にいていいのだろうか。

周りにそんな環境の人なんていなかったからわからないが、よくある恋愛小説では政略結婚とか家柄が・・・とか言われるのだろうか。

これからの話って、やっぱり別れ話?今日が最後の晩餐?どうしても思考が悪い方へとしか向かわない。

もし別れる事になるのだったら、やっぱり先に教えてほしかった。
同じ職場で彼の行く末を見て行く自信はない。
もし別れる事になったら、直ぐに辞めるのは迷惑もかかるから、最低でも一年は頑張らないと・・・。

一人思考が突っ走り、横で何か言っている祐世の言葉が全く頭に入らなくなっていた。



< 94 / 167 >

この作品をシェア

pagetop