交錯白黒
「お前さっき凄かったな。見てるこっちが照れる」
「ほんとそうですよ。あんな公衆の面前で、しかもかなりシリアスなシーンであんなこと。不純です」
「いやだから、あれは琥珀が作り出したんでしょ!それに合わせただけ、僕は!」
あの後、自分の家に帰り状況整理に入ろうとした瞬間にこれだ。
「いやでも、高田も満更じゃなそさそうだったし」
「もしかしたら、あるかもですよ」
「今そんな話してる場合じゃないでしょ!あの子脅されてるんだから」
僕は自分の顔が段々赤くなっているのを自覚して、それを何とか悟られないよう、必死に話題逸らしに奮闘する。
「ほー……だから高田の家から出たときポストに何か入れやがったんだな?」
「っ!!」
僕の顔はついに誤魔化せないほど赤く染まっていることだろう。
実は、あの後そのままの勢いで黒歴史にもなり得るメッセージを書いてポストに入れておいたのだ。
まさかそれを見られていたとは。
あのときの僕は本当に脳がぶっ壊れていたのだ。
だから、それなりに物凄い文章を書いていた訳で……。
「まあ、書いた内容は大体わかってますから、本来の話に戻りましょう」
「なっ……!えっ……!?」
僕の戸惑いを他所に、彼らは淡々と談合を進めていく。
僕は二人にバレないように小さく溜息をついて、いつから僕はこんな役回りになったのだろう、なんて思う。
「まず、高田はxに脅された。xは年齢性別共に不明。それ以外の情報は?」
「麗華がメモに気になることを書き残してるわ」
僕が机に並べておいたメモ用紙の一枚を取り出し、天藍ちゃんが読み上げる。
「一つ目。麗華は、麗華のお父様のことを話す、もしくは誰かに会わせると周りの人間を殺すと脅された。言い返そうとしたところ、家の目の前で小火が起きた」
「xは高田の家の電話番号、そして家の位置を知っている人間だな。そして、高田の親父と高田のことも知っているってことか」
容量はインターネット並だと思っていた琥珀の脳も流石にセーブしきれなかったのか、自分でメモノートに書き留めている。
「2つ目。私のお父さんは……死、んでいる……!?」
世界中の秒針が止まった気がした。
地球上から酸素がごっそり消えたような気がした。