ラグジュアリーシンデレラ
それから私は、朝、井出さんに会わないようにした。

一番最初に井出さんのオフィスを掃除して、その後は一切近寄らないようにした。


「なんかごめんね。私だけが盛り上がっちゃって。」

あれ以来、斉藤さんもあまり井出さんの事を、言ってこなくなった。

「私達は私達の世界があるからね。身の丈に合った世界で、生きていけばいいんだって。」

「はい。」

「おわびに、いい男見つけたら、紹介するからさ。」

「ええ?」

でも今回の件で、より斉藤さんと仲良くなれた気がして、かえって良かったのかもしれない。


問題は、井出さんだった。

私が朝掃除しているのを知っているから、自分のデスクにメモを置いていく。

きっと、前日帰る時に、書いているんだ。


《結野ちゃん。
 連絡下さい 待ってます。》


井出さんの連絡先は、申し訳ないけど破って捨ててしまった。

連絡できない。

ううん、連絡しない。

私と井出さんは、たった一度ニアミスしただけ。

ただ、それだけ。
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