ラグジュアリーシンデレラ
そう言うと、井出さんは給湯室から出て行った。

「本当に、お邪魔じゃなかった?」

斉藤さんは、そわそわしていた。

「いいえ。逆に助かりました。」

私は洗った雑巾を絞って、バケツの縁にかけた。


「夢見るって、時には残酷ですね。」

「えっ?」

私は給湯室を出た。

先に出た井出さんが、秘書らしい人と話をしている。

その秘書の人も、スーツが似合って、できる女みたいだった。


まだ、心臓がドキドキしている。

井出さんに言われた言葉が、全身を駆け巡っている。

井出さん。

私、ちょっとだけ、夢見ていいんですか?

カッコいいと思ってしまったあなたに、想われているって。

「斉藤さん。私、酔いをさましてきます。」

「は?お酒も飲んでいないのに?」

「言葉に酔っちゃったんで。」

斉藤さんは、井出さんの言葉に、きゅんきゅんきている私に、気づいたらしい。
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