密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
俺はその後も雛子を口説き続け、その執念で見事に彼女を落とした。
『玲士、ネルドリップで淹れたコーヒーは飲んだことある?』
『いや、ない』
『じゃ、淹れてあげる。手間がかかるからお店ではできないんだけど、家では断然ネルドリップ派なの』
交際を始めて一カ月。お互いの家を行き来するようになり、雛子も下の名前で俺を呼ぶようになった。
昨夜は彼女の部屋に泊まり、ワンルームの狭いシングルベッドで彼女を何度も愛したため、体のあちこちが気怠い。
しかし、俺の胸は幸福感でいっぱいだった。
『……いい香りだな』
裸でベッドに寝ころんだまま、キッチンで手際よくコーヒーを淹れる雛子を穏やかな気持ちで見つめる。
『紙のフィルターよりもやわらかくて弾力性もあるから、香りもおいしい成分もより多く抽出できるの』
雛子は本当にコーヒーを愛していて、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、知識も情熱も人一倍持っているのが伝わってくる。
本来なら、ぜひともSAKAKIコーヒーの社員に、と引き抜きたいところだが、彼女にはまだ自分の素性をきちんと明かしていなかった。
特別隠したいわけではないのだが、ただひとりの男として、なんのしがらみもなく雛子を愛せる時間が幸せだった。