密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 十二月二十四日。今年は平日のクリスマスイブだ。

 スプリング・デイもいつも通り営業しているが、オープンしてからずっと暇。ランチタイムを迎えても、お客さんが来ない。

 工務店のふたりも姿を現さず、今日は別のお店で昼食を取っているようだ。

「雛、俺ちょっと自治会の掃除に行ってくる。店番頼むな」
「わかった。行ってらっしゃい」

 あまりに手持ち無沙汰なので、兄は年末になりちょくちょく招集がかかる自治会の大掃除に出かけていった。

 私は、もう何度拭いたかわからないテーブルを再度拭くために窓際の席に向かう。するとちょうど、店の前を常連の老夫婦が通りかかるのが見えた。

 ふたりともおめかしして、どこかに出かけるようだ。

 デートかな……いいなぁ。あれくらいの年齢になっても、クリスマスに夫婦で特別な時間を過ごすって、憧れる。

 そんなふうに思いながらテーブルを拭いていると、ふいに店のドアベルが鳴った。

 やった、お客さんだ。

「いらっしゃいませ――って。なんだ、間山か」

 ドアから入ってきたのは、先日会った時と同じ派手な柄のポンチョを身につけた間山だった。いつも配達を頼むばかりなので、店に来てくれるのは久しぶりだ。

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