綾川くんが君臨する
𖤐ˊ˗


綾川くんの手によって、放送室の分厚い扉がゴトンと重たい音を立てて閉じられた。

ここに入る瞬間の、空気がぐっと圧縮されるような感覚にはいまだに慣れない。


窓のない薄暗い部屋。
全身を包み込む静寂。
ひんやり冷たい空気。


外界から切り離された空間みたいで、いつもヘンに緊張してしまう。


ひとまず電気をつけようと伸ばした手に、ふと、綾川くんの体温が重なった。

スイッチを入れるのを阻止するように指先が絡んできて、心臓がドッと跳ねる。



「ねえ黒鐘」


体はとてつもなくだるいのに。

強い引力にどうしても逆らえなくて、その瞳を見上げてしまう。


唇は薄い笑みを称えている。

嫌な予感がして、パチン、と強引に電気をつけた。



「なにそのカオ……綾川くん、またよからぬことを企んでるでしょ」

「企んでないよ」

「うそつき」

「“今は”企んでないよ。だってもう、」



再び、パチンと音がした。かと思えば、同時に放送室の照明が落ちた。



「ここには、おれと黒鐘しかいないから」
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