急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
(美幸さんに、また心配をかけておいて、当の私が忘れていてどうするのよ!
でも…若様との事で、それどころじゃなかったんだもん!)
そして亜里砂はあらためて自覚する。
(私…結婚までしようとしたくせに、池澤を前にして、こんな風にドキドキした事、付き合い始めてからさえ一回もなかった…)
前職で、新人として部署に配属され、暫くして…。
定時後の…まだ人が大勢残る職場で、池澤に大きな薔薇の花束を渡され、衆人環視の中、片膝をつき、『好きだ』『結婚を前提に付き合ってくれ』と…今思うとまるでパフォーマンスのような告白を受けた。
配属されたばかりの亜里砂は、隣の部署の池澤公平の顔などよく知らなかったのだが、同期や先輩社員とのランチ中の会話などで、女性に人気がある男だという噂は、少しだけ耳にしていた。
たぶんモテる池澤は、断られることなど想定していなかったのだろう。
だからこそのあの派手なパフォーマンス的告白だったのだと今ならわかる。
そんな池澤の、他の社員達に見せつけるような派手な告白は、新人の亜里砂にとって、悪目立ちするし、只々迷惑な事でしかなかった。
実際、その告白はその場で断ったにもかかわらず、池澤を好きな先輩女子社員達から、『仕事もまだ何も出来ない新人の癖に、男に色目を使うのだけは素早い』『告白されていい気になっている』『すぐに断ったのも生意気だ』などと言われ、目の敵にされ始めたのだ。
幼少期から、外交官である父の仕事について、日本にいるよりも外国での暮らしが長かった亜里砂にとって、そのお陰で培った数ヶ国語を操る語学力を、思う存分に活かせる職場であったため、亜里砂は新人ながら、仕事でメキメキと頭角を表していったのだが…。
どうやらそれも、池澤フアンの女性社員達は気に入らなかったようだ。